時価数億円の血脈
****

火葬場で感嘆の溜息が漏れた、そしてみなして綺麗といったのだった。
崇高で緻密に作られた芸術品のようだった。血の赤が絡み合って、生きた軌跡が目に焼き付くようだった。人間の形をしている飴細工のようだ。
だからこそハンマーで砕くのはもはや彼女を殺すように思えてしまって、ハンマーを持つ手が震えてしまった。

彼女は実の両親と絶縁していて、火葬は俺と研究員だけだった。
キスしたとき、終わると本能的に察した。舌を吸い上げて魂を引きづりこむようにキスを深めたが急速にからだは冷えていったのだった。彼女との数か月のデータをまとめておくったが、今はとてもじゃないと無理だった。彼女は遺言書にて俺の意思に全ては任せると書いてあった。いつの間にである。

「美しいですね、死んでもなお」

世のタブーを突き詰めたような美しさだった。
それが小学生から今にかけての生きていた彼女とアンバランスに思えた。

「美琴、さよなら。安らかに」

ハンマーを振り下ろした。キラキラと破片は煌めいて、儚かった。

市橋診療所の桜はいつだって花びらのピンクは濃く、緑の葉桜になった後も若干赤みがかっている。診療を受けた人は春頃、受付で桜のしおりをもらうことを喜んだ。

「先生、毎年ここの桜は綺麗ですね」

「ええ、ここの桜はどこよりも美しくて、儚いよ」






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