ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
「平和ねぇ……」
「そうだねぇ……」

 カウンターの上に頬杖をついてぼうっとしながらつぶやけば、マルも同じように返してきた。
 時々、エヴァンドロが呪いを巻き付けているのを祓う以外、ほとんと聖女らしいことはしていない。
 何度か頼まれて瘴気を祓う程度だったので、これでいいのかという気もしてくる。

「……私、この国に来てからの方がずっと幸せだと思う」

 ぽつりと零れたのは、シアの本音。
たぶん、幼い頃は実家の家族も愛してくれていたのだろう。だが、シアが聖女になり、瘴気を取り込むことはできても、自分の身体に瘴気を残してしまうと知ってからは、家族の愛情は少しずつ薄れていった。
 殺されなければならないような落ち度がシアにあったのかと問われると、今でも首を傾げてしまう。
 泣いても、懇願しても、逃げても、だめ。
 いつも迎えるのは同じ最期。家族の手によって殺されるか、家族が雇った者に殺されるか。シアの人生の結末は二択しかなかった。

(ジュスラン殿下に殺されたこともあったな、そう言えば)

 婚約者自ら剣を取り、シアを手にかけたこともあった。それを入れれば、シアの人生の結末は三択か。
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