ループ11回目の聖女ですが、隣国でポーション作って幸せになります!~10回殺され追放されたので、今世は自由気ままな人生を満喫してもいいですよね?~
 瘴気が発生したら祓うとエヴァンドロには言ったけれど、どういうわけかほとんど頼まれない。
 支給される金銭はいつか返すつもりで手を付けずにとってあるし、野菜を作ることで食材についても最小限になるように心がけている。
 だが、仕事がない以上、シアの存在意義というのは限りなくゼロに近いわけで。今の立場を一番正確に表現しているのはきっとたまに働くだけの居候だ。

(ご飯くらいなら、いいかなぁ……)

 難しい立場にあるのが、自分でもわかっているからだろうか。うかつな行動はとらない方がいいと、気持ちを引き留めてしまう。

「――ベラ、悪い。シアのポーションを三本……いや、五本もらえないか」

 慌ただしくベルが鳴ったかと思ったら、ちょうど話題に出たばかりのエドが勢いよく入ってきた。シアのポーションは人気なので、基本的にひとり一本までだ。それを五本とは、どういうことだ。

「ごめんなさい。ひとり一本って決まって――」

 ひとり一本と決めているのは、エドも知っているはずなのにどうしてそんなことを言い出すのだろう。

「北の森に人食い猿が来た。無理を承知でどうにかならないか」
「人食い猿って?」
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