あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
(部長室に呼び出されたら私……屋久蓑(やくみの)部長との距離、絶対近くなっちゃうよね? うー、考えただけで心臓バクバクするんだけどぉー。――大葉(たいよう)は……平気なの?)

 そんなことを考えながらギュッと胸のところを押さえて、羽理(うり)は小さく吐息を落とした。


***


 屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)は社名入りの軽トラを運転して会社に戻ると、駐車場へ車を停めてドアに施錠をしながら、グーンと伸びをした。

(軽トラ、荷物が沢山載せられて便利なんだが、乗り心地が良くねぇんだよな)

 リクライニング出来ないシートに、クッション性の高くないサスペンション。
 最近の農道は国道や市道なんかよりよっぽど舗装が良いから、走行していてもそれほど車体が跳ねまわったりはしないけれど、それでも長いこと乗るには不向きだ。

 大葉(たいよう)はそれほど大柄な男ではないけれど、愛車のSUV――ニチサン自動車のエキュストレイルに比べると、格段に狭いし乗り心地も悪い。

(ケツが(いて)ぇ)

 ギシギシに固まった身体を伸ばすと、あちこちがパキパキ鳴って気持ちよかった。

 この身体の疲れ、実は運転のみのせいではない。

 今日の出張先でも、大葉(たいよう)はつい出来心から現場の作業をこなしてしまったのだ。

 本来ならば売り方などをプロデュースするだけの立場にある土恵(つちけい)商事の人間が、農作業に手出しする必要は皆無なのだけれど。
 大葉(たいよう)は元々農業に造詣(ぞうけい)が深い方だったからほとんど無意識、「《《私》》にも手伝わせて下さい」なんてセリフを吐いてしまっていた。

 家族からの勧めで、大学は農大に行った大葉(たいよう)は、そこで専攻した土地活用学科で水稲(すいとう)の基礎的な学習や、麦や大豆、路地野菜の生産や機械作業に関する知識・技術を実習主体の実践学修で学んだ。
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