あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
「な、なんだよ……!」

「別に……」

 お互いにムスッとして鏡の前――。

 これが大葉(たいよう)の家ならばきっと……今頃足元にキュウリちゃんがテトテトとやって来て、『どうしたんですか?』と言わんばかりにつぶらな瞳で自分たちを見上げてくれているだろう。

 そうして、キュウリちゃんを二人して気にしている内に、何となく話せるようになるのだ。

「キュウリちゃんが恋しいです……」

 無意識にポツンとつぶやいたら、大葉(たいよう)がハッとしたように「なぁ羽理(うり)。それって……」とつぶやいて、期待に満ちた目で羽理を見詰めてくる。

(何故そんなキラキラした目で私を見詰めてきますかね!? さてはキュウリちゃんのつもりですかっ!?)

 などと思いつつも戸惑いを隠せない羽理は、キョトンとした顔で大葉(たいよう)を見詰め返したのだけれど。

「あ、いや……、いい」

 何をどう納得したのかは分からないけれど、大葉(たいよう)の機嫌はすっかり回復しているみたいだ。

 羽理は心の中で(キュウリちゃん効果凄い!)と、ちょっぴり《《ズレた》》ことを考えていた。


***


 鏡の前で羽理(うり)と二人。
 何となく気まずい雰囲気になってしまっていたけれど、それを打開する上手い方法が見出せなくて、大葉(たいよう)は己の不甲斐なさを痛感していたのだけれど。

 不意に羽理が「キュウリちゃんが恋しいです……」とかつぶやくから。
(それって、俺の家に住みたいってことだよなっ!?)
 と、羽理が聞いたら『何でそうなりますかね!?』と言うであろう斜め上なことを思っていた。
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