あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 当然そんな羽理(うり)は、『すみません。昨夜プライベートでちょっとしたハプニングがあって寝不足なんです』なんて言い訳はしない。

「ご心配おかけして申し訳ありません。――大丈夫です」

 キリリとして姿勢を正せば、岳斗(がくと)はそれ以上追及してこなかった――、のだけれど。

「先日屋久蓑(やくみの)部長が出張に行かれた際のこれなんだけど」

 不意に大葉(たいよう)の名を出されて、スマートフォンの連絡先に昨夜新たに追加されたばかりの〝屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)〟との有り得ないやり取りを思い出した羽理は、思わず「ひゃっ、裸男っ!」と意味深な発言をしてしまって、岳斗に「えっ? 裸男?」と問い返されてしまった。

「あ、あのっ、なっ、何でもありませんっ。きっ、気のせいですっ」

 岳斗から何が気のせいなの?と再度問い掛けられたらどうしようと思っていた矢先。

「――倍相(ばいしょう)くん、話し中のところちょっと悪いんだけど、出張のこと(そのこと)について、彼女に直接説明したいことがあるんだ。――いいかな?」

 すぐ横からいきなり声を掛けられた。

 その、昨夜さんざん聞かされたよく通る低めな声音に、羽理は声の主を恐る恐る見上げて。

「やっ、屋久蓑(やくみの)部長っ!」

 今まで会社では全く接点のなかった上司様の突然の降臨に、大きく瞳を見開いた。


***


「はぁー。分からねぇわけだわ」

「え?」

「いや、お前、化けすぎだろ!」

 同じフロア内。
 最奥にある部長室へ入って扉を閉ざすなり、屋久蓑(やくみの)に「詐欺だ!」と盛大に溜め息をつかれた羽理(うり)は、「いきなり失礼な人ですね⁉︎」と反論せずにはいられない。
< 34 / 539 >

この作品をシェア

pagetop