あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
「それは大葉(たいよう)が良くないわねっ!?」

 ややして、やや食い気味につぶやいた果恵(かえ)が、ギュッと羽理(うり)の手を握りしめてきて、「そんな大事なこと隠しておかれたとか……知ったとき、辛かったでしょう!? 怒って当然だわ! 本当、うちの馬鹿息子がごめんなさいね? あの子が来たら思いっきり責めてやりましょう!? 私も加勢するから!」と、握ったままの羽理の手をブンブン振りながら激励(げきれい)してくれる。

 柚子(ゆず)からは大葉(たいよう)擁護(ようご)する言葉ばかりだったから、羽理は勝手に、きっと果恵からもそうされるものだと思い込んでいた。

 でも実際はそうではなくて、自分の気持ちに寄り添ってもらえたことが、鼻の奥がツンと痛むくらい嬉しくて――。

 でも、それと同時に〝あの子が来たら〟という文言が引っかかってしまう。

「あ、あの……果恵、さん……今」

「やだ、羽理ちゃん! 果恵さんだなんて他人行儀よぅ? 『お義母(かあ)さん』って呼んで?」

 ぎゅうっと掴まれたままの両手に力を込められた羽理は、戸惑いながらも「お、かあ、さま……?」と呼び掛けたのだけれど。

 途端、果恵がぱぁっと瞳を輝かせて「なぁに、羽理ちゃん?」とこちらを見詰めてくるから。
 羽理は大葉(たいよう)と似た美貌の義母(?)の視線にソワソワしながら「あの……聞き間違いだったらすみません。もしかして……大葉(たいよう)、こちらに向かっていたり……します、か?」としどろもどろになりながら言葉を(つむ)いだ。

「ええ、さっき、羽理ちゃんのこと引き留めといて欲しいって連絡があったから。……もう着く頃じゃないかしら?」

 のほほんとした調子で小首をかしげる果恵に、羽理は瞳を見開いた。
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