あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
 愛犬キュウリは昨夜のうちにすぐ上の姉・柚子(ゆず)に預けてある。一応日帰りの予定にはしているが、ウリちゃんを待たせての外出ではない分、帰りが遅くなっても安心だ。

 手土産も用意したし……と思いながら、羽理(うり)に『不備はないか?』と問い掛けた大葉(たいよう)だったのだが。

 スーツをビシッと着て気合い入りまくりな大葉(たいよう)を見て、羽理が「もぉー、大葉(たいよう)ってばホント朝から落ち着きがないんだから。そんなに構えなくても大丈夫ですよー?」と、のほほんと微笑んでくれる。けれど、大葉(たいよう)としては『こういう時に構えなくていつ構えるんだ?』と問いたいくらいなのだ。

 それを口にしようとした矢先――。
「ほら、今日は猫吸いしに行くだけですし」
 当然のように続けられた言葉に、大葉(たいよう)は「ん!?」と聞き返さずにはいられない。

「羽理。お前、今なんて……」

「え? 猫吸いをしに……」

「いや、違うだろ!」

「え!?」
 
 キョトンとする羽理に、「今日はお前との結婚の挨拶と……同棲の許しを請いに行くのがメインだぞ!?」と眉根を寄せたら、「きゃー、どうしましょう! 私、お母さんにそんな風に話してません!」とか。

「いや、じゃあ何て言ったんだ!」

 ソワソワしながら聞けば、
「えっと……『お付き合いをしている男性(ひと)が〝毛皮〟のにおいを嗅ぎたいって言うので、連れて行ってもいい?』って聞きました」
 羽理があっけらかんとそんな言葉を返してくるから、大葉(たいよう)は思わず「それだと俺、すっげぇ変な男じゃないか!」と言わずにはいられなかったのだが。

「えっ。でもお母さんもお婆ちゃんも『猫好きに悪い人はいない。是非来てもらいなさい』ってめっちゃ乗り気でしたよ?」

 返された羽理の言葉に、大葉(たいよう)が(この親にしてこの子ありなのか?)と思ったのは、致し方ないだろう。


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