あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
「もぉ、お母さん、いきなり距離削り過ぎっ! 大葉(たいよう)が固まっちゃったじゃん!」

「えー!? だって思ったより何百倍もハンサムさんだったんだもん! お母さんだって間近でじっくり見たいわよぅ!」

 情けない話だが、羽理(うり)がワンクッション入れる感じに割り込んでくれたことで、大葉(たいよう)は母親の視線が自分から外れて、やっと呪縛が解けたように身動き取れるようになった。

「あ。――えっと、申し遅れました。わ、わたくし、お嬢さんとお付き合いさせて頂いております屋久蓑(やくみの)大葉(たいよう)と申します」

 それでしどろもどろ。何とか自己紹介をすることができたのだが――。

「まぁまぁご丁寧に。……私はその子の母親の荒木(あらき)乃子(のこ)と申します。――で、この子が……」

 名乗るとともに手の中の白いふわふわを目の前へ突き出された大葉(たいよう)は、思わず〝それ〟を受け取ってしまう。

「ジャジャーン♪ 今日屋久蓑(やくみの)さんが《《来訪なさった目的のメイン》》っ! ふわふわ白猫の毛皮ちゃんでーす♪」

 羽理そっくりの口調で「ジャジャーン!」という効果音付き。急に真っ白な毛玉――もとい〝毛皮ちゃん〟を抱かされた大葉(たいよう)は、猫らしく人見知りを発揮した彼女(彼?)に引っ掻れて逃走! されることを覚悟したのだが――。

(ちょっと待て、何でだ!)

 予想に反してゴロゴロと喉を鳴らして嬉し気に大葉(たいよう)のあご下へ顔をすり寄せてくるではないか。

 ずっしりと重量感のあるボディに、べちゃっと潰れて見える微妙なお顔立ち。猫、と呼ぶには余りにもちんちくりんなその面貌(めんぼう)は、ちょっぴり居間猫(いまねこ)神社の猫神様(チェシャネコ)髣髴(ほうふつ)とさせられる。
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