あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜
「実は今日こちらへお(うかが)いしたのは、羽理(うり)さんと結婚を前提とした同棲のお許しを頂きたくてのことです。羽理さんを必ず幸せにすると誓います! お願いです。どうか、羽理さんとの同棲と結婚をお許し頂けないでしょうか?」

 言うと同時、深く深く頭を下げた大葉(たいよう)を見て、羽理も慌てて「お願いします」と頭を下げる気配がする。

 大葉(たいよう)は畳を見詰めたまま、羽理が自分と同じ気持ちで足並みをそろえてくれたことにじーんとしたのだけれど。

「もぉ、うーちゃん、そういうことはお菓子を置いてから言うものよ?」

 クスクスと乃子(のこ)が笑う声がして、大葉(たいよう)はうつむいたまま(え?)と思った。

「だってぇ……大葉(たいよう)がいきなり大事な話、切り出すんだもん!」
 羽理としては、手にしたばかりの月たまをどうしていいか迷ったらしい。

「そういう()まらんところがりっちゃんらしゅうてええの」

 ガハハと豪快な笑い声とともに、「そもそもわしゃあ乃子を(はら)ませた相手から何の挨拶も(もろ)ぉちょらん身じゃけん」と吐息を落とした(うい)が、「こうやってわざわざ挨拶に来てくれたっちゅうだけでわしは大賛成なんじゃが。乃子はどうかいの?」と娘を見詰めた。

「私も……反対する理由はないです」

 乃子の言葉に、「じゃあ」と顔を上げた大葉(たいよう)だったのだけれど。
 すぐさま「ただ……」と続けられて、にわかに緊張で身体を固くした。

「ただ……絶対にこの子を裏切らないと約束して下さい。散々期待させて捨てるのだけは絶対に無しです。もし……そんなことをなさったら、私は地の底まで貴方を追い掛けて息の根を止めますから」

 乃子の真剣なまなざしに、大葉(たいよう)は「お約束します」と答えて、再度深々と頭を下げる。

 そんな大葉(たいよう)の横で、猫神様を真っ白にしたみたいな毛皮が、「おめでとう」と祝福するみたいにニャニャーンと鳴いた。
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