生意気な後輩はどうやら私のことが好きらしい
さよなら、平穏な日々


今日も見慣れた風景を横目に力いっぱいペダルを踏み込む。


入学前に買ってもらったこの白い自転車は私の大切な相棒だ。

つい先日まで綺麗な花を咲かせていた桜の木はすっかり緑へと染まり、風が吹くたび葉を左右に揺らす。

天気のいい日は風が気持ちいい。

似たような制服を着た学生達が駅へと向かう中、私は信号機の前で自転車から降りた。

「おはよう」

「おはようございます」

道路を挟んだ向かい側から聞こえる先生の声。

隣には私と同じ制服を着た生徒が数名、一緒に挨拶運動をしている。

「おい、そこの男子生徒!自転車から降りなさい」

「……はーい」

先生から注意をされて渋々、自転車から降りる男の子。


校内では自転車は押して歩かなければならない。というルールがある。


だから、私はいつも決まってこの場所で自転車から降り歩くようにしている。

「おはようございます」

私も他の生徒同様、先生達に挨拶をすると真っ先に駐輪場へと向かい自転車を停めた。

「穂波ちゃ〜ん!おはよ」

教室に向かう途中、後ろから名前を呼ばれ振り返ると友達の鈴音(すずね)(通称すずちゃん)が大きく手を振っていた。

その場で足を止め、「おはよ。すずちゃん」と返すと小走りで駆け寄ってくる彼女。

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