深まり愛~彼は一途な想いを貫く~
恭也がニヤリと笑う。なんとなく嫌な予感がした……。

「そうか。何も言わずにするのもありなんだな?」
「それ、何の確認なのよ?」
「いろんなことに対してかな? 主に触る系で」
「ちょっと! 好き勝手に触っていいとは言ってないからね」
「触っていいかと聞くべき?」

話がおかしな方向にいっているようだ。私はピタリと足を止めた。

視界の先には蕎麦屋らしき店が見える。

恭也が不思議そうに首を傾げた。

「その時の状況によると、思う」
「なるほど。ではその都度、状況を把握した上で試みるよ」
「うん……お願いね」

私が動き出すと、恭也も歩を進める。

ひとつひとつ確認する慎重な性格だったかな。

あの頃も気遣いができる人ではあったけれど、もっと思ったままに行動する人だった。

高校生の時を思い出して、ちらりと恭也を見た。

前を向く恭也は楽しそうだ。

「さやか、ここ……ん? なんか顔に付いてる?」
「ううん、付いてないよ。あ、ここだね。入ろう」
「ああ、うん……」

店の自動ドアが開き、私たちは手を離した。
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