フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
江南君のお姉さんのお店のクレープは、どれも本当に美味しかった。まず見た目が可愛くて、生地の味とかトッピングとか、自分でカスタマイズできるシステムも凄く良かった。

あと、感動したのがクレープの巻き方。たくさんトッピングを乗せても食べづらくないようにって、包み紙が少し大きめになってた。

「彼氏とデートに来たら、ちょっとでも可愛く綺麗に食べたいだろうしね」って言ってる一香さんを見て、気遣いの塊過ぎて目からウロコが落ちた。

ウチも接客業だし、こういう細かい気遣いを見習いたいって凄く勉強になった。あと、めちゃくちゃ美味しかった。最高だった。

終始「最高です」しか感想言えなかったから、役に立てたのか怪しいけど。

「相崎さん、今日はありがとね」

帰り道、江南君がニコニコしながら言う。

「いやこちらこそ。だけどあんなに食べさせてもらったのにお金も払わないなんて、やっぱり申し訳ないなぁ」

「姉ちゃん喜んでたし、マジで気にしないで。俺が連れてった女の子気に入るの初めてだし」

よく分かんないけど、私気に入ってもらえたのか。それは嬉しい。

「今度はちゃんとお客さんとして食べに行くね。華と」

「おー、そうしてやって。じゃ、俺こっちだから」

「うん、バイバイ」

江南君と藤君に別れを告げて、私は電車に乗ろうと駅へ向かう。



「…あの」

歩くこと数十歩。隣の人に話しかけずにはいられない。

「何?」

満面の笑みの藤君と、変な顔の私。

「藤君、お家こっち?」

「いや、違うよ」

「じゃあどうして?」

「駅まで相崎さん送ろうと思って」

「まだ暗くないし、大丈夫だよ」

「一人じゃ危ないでしょ」

「そんな女の子扱いしなくても」

「相崎さん、女の子でしょ」

「藤君、凄いね」

隣を見ながら、私は素直に感心した。

「え、何が?」

「嬉しいから」

「ん?」

「女の子扱い、嬉しいよ。ありがとう、藤君」

素直な気持ちを口にすればなぜか藤君は急にそっぽを向いて、いつもの可愛いスマイルはくれなかった。
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