フラグを全力で育てる系女子の恋愛事情〜なぜか溺愛されてますが〜
「おはよ、小夏」

教室に着くと、華が笑いながら片手を上げた。

「あれ、なんか顔おかしくない?寝坊したとか?」

「そんなんじゃないんだけどさ…」

もう、なにをどう説明したらいいのか分かんない。

あのオープンスクール以降、華には藤君と福間さんのことは話てある。てっきり「チャンス逃すなんてバカ過ぎる」とか言われると思ってたけど、華はただ静かに話を聞いてくれた。

そのおかげで、気持ちがだいぶ前向きになってたのに、今朝の一件でまた頭が混乱してる。

颯君、あれはどういう意味で言ったんだろう。もしかしてホントに私のこと…

いや、まだ分かんない。ハッキリとした言葉で聞いたわけじゃないし、今深く考えるのはやめよう。

「まだ夏休みボケしてるのかも」

私はヘラッと笑ってごまかした。

「まぁ、私も夏休みはずっとイッチーと一緒だったから、イッチーロスだけどぉ」

「クソッ、この彼氏持ちめ。イラッとするから、華の腕のところの日焼けの皮がまだらに剥けますように」

「おい、変な呪いかけんな小夏」

「だって華だけズルいもん」

「なに言ってんのよ。アンタだって、福間さんっていうワイルドイケメンに、あんな可愛くしてもらったくせに」

華がニヤニヤしながら、私の髪の毛をちょんとつついた。



「はよー」

やたらと元気な声が聞こえたと思ったら、江南君だった。そしてその隣には藤君もいる。

「隅田さん、相崎さん、おはよー」

「おはよう江南君」

「一学期ぶりだね、元気してた?ちなみに俺は超元気だったよ!」

相変わらず江南君はテンションが高い。適当に相槌を打ちながら、バレないようにチラッと藤君に視線を向ける。

相変わらずイケメンで、教室でも光り輝いてる。

「相崎さん、久しぶり」

視線に気づいたのか、藤君が私に声をかける。柔らかく細められたその目に、心臓がギュウッと潰された気がした。

「う、うん…」

普通にしなきゃ。普通に、普通に。

「華、私トイレ…っ」

上手く表情が作れなくて、藤君の方を見ないまま私は教室を飛び出す。

夏休み中、どうしても藤君のことが頭から離れなかった。拒絶したのは自分なのに、気づいたら彼からの連絡を待ってた。

福間さんにだって、ちゃんと返事をしなきゃいけないのに。

「私のバカ……っ」

どうして藤君にだけは、普通に出来ないんだろう。
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