NEVER~もう1度、会いたい~
それから
その日のさいたまスタジアムは、4年前とは打って変わり、満天に星が輝いていた。


「さぁ、行くぞ!」


入場テーマ曲が流れ出したのを聞いて、サムライブル-の面々に声を掛けたのは高城翔平。先頭を切って、ピッチに向かって歩き出した背番号9の左腕には、キャプテンマークが巻かれている。


彼らの登場と共に、スタジアムの興奮は最高潮に。


(帰って来たんだな、俺・・・。)


その光景を目の当たりにして、さすがに翔平の胸にはこみ上げて来るものがあった。


(必ず勝つ。未来、見ててくれよ。)


そして、このスタジアムの一角で、大観衆と一緒に自分に声援を送ってくれているはずの愛しい人に、翔平は改めて思いを馳せる。


ホイッスルが鳴った。この日の試合はW杯アジア予選最終戦、現在2位のサムライブル-は今日勝てば、自力でW杯出場を手に入れるが、負ければ今日の対戦相手、オーストラリアにその権利を譲ることになる。、翔平にとっては因縁の相手と全く4年前と同じシチュエ-ションでの戦いとなった。


試合前、翔平は自身を負傷させた相手と再会を果たしていた。既に現役を退き、今回はチ-ムスタッフとして同行している彼とガッチリ握手を交わした翔平は


「いい試合をしましょう。」


と笑顔で声を掛けた。


そして今、そういった雑念を一切払いのけて、翔平はピッチを走っていた。


(翔くん、しっかり・・・。)


そんな彼の一挙手一投足を見逃すまいと、スタンドで高城未来はじっと目をこらしている。


「あっ、高城にボールが渡った。よし、走れ!」


左隣の席の本多恵が興奮して立ち上がるのにつられて、未来も思わず立ち上がる。大歓声を一身に受け、翔平はシュ-トを放つが、ボールは惜しくもゴールポストを外れた。


「あ~ぁ。」


「惜しかったね。でもこの次はパパは絶対に決めてくれるから、一緒に応援しようね。」


残念がる親友の横で、自らのふっくらしたお腹に手を当てながら、そう語り掛けて、未来は腰を下ろした。
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