NEVER~もう1度、会いたい~
だが


「先生、お願いします、先生にしかお願い出来ないんです。どうか翔平選手を・・・翔くんを救って下さい。お願いします!」


未来は引かなかった。もう1度そう言って、深々と頭を下げた彼女を、もはや黒部は困惑の目で見ている。


「なぁ、この前も聞いたが、お前、高城翔平の何なんだ?」


改めて尋ねて来た黒部の顔を見て


「翔くんにとって、私がどんな存在なのかはわかりません。でも私にとって翔くんは・・・命の恩人です。」


未来は答える。


「藤牧・・・。」


驚きを隠せない黒部に


「翔くんがいなかったら、翔くんと出会ってなかったら、私は間違いなく、今ここにはいません。私は彼から、生きる力を貰ったんです。」


未来はそう言い切った。そして


「先ほど先生は、翔くんの方から頼まれれば、診るのもやぶさかじゃない、そうおっしゃいました。」


改めて黒部を見て言った。


「いやお前、あれは言葉の綾っていう奴でな・・・。」


「明日、私が翔くんに会いに行って説得します。それで、翔くんから正式にお願いしたら、診て頂けますね?」


「しかしだな・・・。」


「先生、困っている患者さんに寄り添い、その患者さんを救うこと。医者にとって、それ以上の存在価値は他にないって、いつも私におっしゃってるのは、先生じゃないですか?」


「恵・・・いや、それはその通り・・・。」


未来の懸命の訴えに、恵の援護射撃が加わって、ついに黒部は完全にシャッポを脱いだ。が


「あくまで高城が俺に診てくれと言うなら、その時は仕方がない。だがアイツがそう言って来ても、ウチの院長や理事長が遠山にビビッて、奴の受け入れを拒むかもしれんぞ。」


と大人の論理を持ち出して、一太刀を浴びせかけたが


「そんなことあり得るはずがありません!」


「そうですよ。先生はご自分の所属する病院のトップを信用されないんですか?」


若い2人の純粋な情熱に一蹴され


「未来、明日、しっかりね。」


「うん、ありがとう恵。」


と恵から未来に熱いエールが送られるのを目の当たりにして


(こりゃ、いよいよ俺も腹括らんといかんな・・・。)


そう思った黒部は、フッと笑みを浮かべた。
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