NEVER~もう1度、会いたい~
その夜、恵の仕事終わりを待って、未来は2人でよく行くカフェレストランで夕食を摂っていた。今日、翔平に会いに行くことを知っている恵に、顛末を報告すると


「それで、肝心な話はしなかったんだ。」


彼女は1つため息をつくと言った。


「肝心な話?」


「私たちの前から姿を消してから今日まで、未来がどうしていたかを高城に報告することはもちろん必要だったと思うけど、今日未来が高城に会いに行って、話さなきゃならなかったのは、確かめなきゃならなかったのは、今の2人にとって、お互いがお互いにとって、どういう存在なのかってことのはずでしょ?」


声を励ます恵に対して


「そんなのは話さなくても、最初からわかってる。」


未来は静かに答える。


「今の翔くんの心の中に、私の存在なんてどこにもない、あるはずないんだよ。だって私は12年前、そうなることを望んで、彼の、みんなの前から姿を消した。そんな私が今更、彼に何を求められるって言うの?」


「未来・・・。」


「私があの時、何を考えてああしたのかを再会して恵に話した時、凄く怒られたよね。今日の翔くんもやっぱり怒ってた。今考えれば、それが当然だと自分でも思う。あの時はそれが正しいことだって思ったんだけど、やっぱり違ってたんだよ。だとしたら、そんな私が今更、翔くんの中に自分の居場所を求めるなんて、虫が良すぎる。ずっとそう思って来たんだけど、今日、彼と話して、改めてそう思った。だから・・・これでいいんだよ。」


「でも私はこうして、また未来と友達になってるじゃない。」


「恵には感謝してる。でも・・・女同士だからね。」


「えっ?」


「翔くんと私は・・・男と女だもん。やっぱり一緒に居られる異性は1人しかいないんだよ、違う?」


「未来・・・。」


そう言って、微笑んだ未来だったがその表情が陰りを帯びているのを、恵は見逃してはいなかった。


同じ頃、仕事帰りに病室に立ち寄った朱莉は翔平から、昼に未来と話をしたことを聞かされた。


「それで、翔平は自分の気持ちをちゃんと彼女に伝えたの?」


尋ねる朱莉に


「伝えられるかよ。結局これまで、俺は勝手に独り相撲を取っていただけだったらしいってわかっちまったら、もうなんにも言えなくなっちまったよ。」


乱暴な口調で、でも翔平は寂しそうに言った。


「じゃ、そう言う事でいいのね?」


「えっ?」


「未来さんといつか絶対にまた会える、その日が来るのを信じて、待ち続けたあなたの時間は終わったっていうことで。」


「ま、会えたことだけは間違いないからな。」


答えた翔平の顔を、朱莉はキッと見つめた。


「翔平。」


「な、なんだよ。」


朱莉の真剣な表情に、気圧されたように答える翔平。そんな彼を真っすぐに見て


「じゃ、もう私、自分の気持ちを押し殺さなくてもいいよね?」


朱莉は告げる。


「朱莉・・・。」


「好きだよ。」


「翔平のことがずっと前から・・・そう、高校生の時から好きだった。」


「ちょっとお前、いきなりなにを・・・。」


「気が付かなかった?」


「だって俺達は・・・。」


動揺を隠せない翔平を見て


「相変わらず成長してないね、翔平は。」


「えっ?」


「女心がなんにもわかってない。」


呆れたような声でそう言った朱莉は、フッと苦笑いを浮かべた。
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