フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました
7話 不貞の発覚、そして彼のもとへ


夫とこの先同じレールを歩くために、向き合って話をしようと決めたその矢先、事態が一変した。


彼の勤務先が業務縮小のため、大幅に人員削減すると発表したのだ。いわゆるリストラだった。
噂は少し前から流れていたらしい。そして、裕一はそんな雰囲気を察知していち早く転職活動を始めていた。
会社が早期退職希望を募るとすぐに手を上げ、退職金も次の仕事もきちんと確保したのだ。

ただしそれは全て、事後説明だったのだけれど。

わたしがそのことを知ったのは、彼が転職先を見つけて退職も決めてからのことだった。夕食時に、あっさりと報告されて、わたしは箸を取り落としそうになる。

「僕はリストラ対象じゃなかった。でも、そんな会社に未練はないからね、ずっと転職先を探してたんだ」
「……ぜ、ぜんぜん、そんなこと知らなかったよ」
「そりゃ言わなかったし。君の助けがいるようなことじゃないだろ」
「でも、相談くらい……」
「相談ねえ。君は自分の『仕事』に夢中だし。そもそも、相談相手を君に求めてるわけじゃない」

彼は携帯から目を離さないまま、話をする。

 あの日、わたしが小さな家出から帰ったとき。裕一は夜遅く酒の匂いをさせて帰ってきた。わたしの姿を見て、少し驚いたきりでなにも言わなかった。その日以降も彼はそのことには触れずに普段と変わらなかったけれど、結局「家出の原因」について尋ねることはなかった。
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