フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました
わたしは改めて頭を下げた。

「上月くん、サックスずっと続けてたんだね……。すごかったよ」

好きなことをずっと続けていられることに、少し羨ましさも覚えた。彼は嬉しそうに頷き、
「楽しんでくれてよかったです。先輩が見に来てくれたから特別なんですよ。でも、バンドの生演奏は毎週末やっています。よかったらまた来てください」
「ありがとう! 絶対行くよ。お料理も美味しかったー!今度は、今日来れなかった友達と行くからね」

『特別』に演奏してくれたという言葉が照れくさくて、ごまかすように早口で答える。

「お友達にもよろしく伝えてください。今日はほんとうに、会えて良かったです。懐かしくて……」

彼は爽やかな仕草で、少し長めの前髪をかきあげる。
「先輩、全然変わってないですね」
彼がぽつりと呟いた。
「そ、んなことないよ……。それから、先輩っていうの、もうやめてよ。いっこしか変わらないのに」
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