フラれた後輩くんに、結婚してから再会しました
この空間は、ドアばかりだ。
きっと、どこに入っても、間違いか、正解かもわからない道へと繋がっている。
エレベーターを降りたわたしは、カードキーの番号を頼りにホテルの廊下へとおそるおそる踏み出した。
左右に現れる同じ形のドアは、明かりが抑えられた廊下の中で、まるで異空間に浮かんでいるみたい。
番号だけが違う。
その一つひとつが自分の過去や、現在のどこかへ繋がっていそうで、なんだか途方に暮れてしまう。
誰もいない廊下に、ひとりぼっち。
また、込み上げてきそうになる涙を堪えてわたしは、カードキーの数字が示すドアを探した。
なかに入り、キーを差し込むと、明かりがつき、真っ白な壁を照らした。
(あ……結構広い……んだ。ホテルなんて、何年ぶりだろう)
飛び込んだビジネスホテルには幸い空室があった。
「夜景の見えるお部屋と、山が見えるお部屋、どちらも同じ価格でご用意できますが、どういたしますか?」
フロント係の女性は丁寧に尋ねてくれたが、わたしはそんなこと、どうでもよかった。
「どちらでも大丈夫です」
そう答えると、彼女はバッグひとつしか持っていないわたしをちらりと見て、優しい言葉で「では、こちらを」とキーを手渡してくれた。
そうして入った部屋は、分厚いカーテンの向こうに美しい夜景の広がるこの部屋だったのだ。