旅先恋愛~一夜の秘め事~
4.一晩の恋人
『――それで、なにを悩んでいるの?』


淡々としたハトコの問いかけに返答に窮する。

タイミングよく電話に出てくれた麗に、この二日間の怒涛の出来事を報告し終えたところだ。

仕事へと戻る暁さんの後ろ姿を混乱した思いで見送った私は、部屋に入ってすぐ柔らかなソファに座り込み、ハトコに助けを求めた。


「悩むというか、自分の感情に答えが出ないの」


『は?』


「自分でも、よくわからなくて。暁さんといると心が落ち着かないし、ふとした仕草や言動に一喜一憂する私がいるの。些細な表情の変化にすら目が離せなくなって……こんな気持ちは初めてで戸惑ってる」


恋愛経験が乏しい私には、自分の心の機微すらうまくつかめない。

考えながら、ぎこちなく胸の内を口にする私に麗の呆れた声が届く。


『急速に名前で呼び合う仲になって、恋人つなぎまでしておいて、今さらなにを言ってるのよ』 


「それも驚いてるの。出会って二日なのに、距離を縮めすぎている気がして……椿森ホールディングスの副社長と恋愛関係になんてなれるはずがないのに」


『なんで決めつけてるのよ? ずいぶん後ろ向きな発言ばかりだけど彼が苦手なの?』


尋ねられて、小声で否定する。
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