旅先恋愛~一夜の秘め事~
手早く衣類を身に着け、寝室を出る前にもう一度彼の寝顔を見つめる。


「……ありがとう、さようなら」


一方的な挨拶だけを残して部屋を出た。

足早に自室に戻り、急いで荷物をまとめた。

ベッドサイドに置かれた液晶時計は、午前四時半を示している。

このままここにいたら、あきらめられなくなる。


だからもう東京に帰ろう。


荷造りを終え、急いで入浴し身支度を整える。

早朝にチェックアウトできるか、午前六時前にフロントに内線で確認すると快く了承の返事をもらった。

受話器を置き、すぐキャリーバッグを手に部屋を出た。

たった数日、なのに思い出が多すぎて胸が痛い。

ギュッと目を瞑り、こみ上げる涙を必死に堪えた。


どこまでも独りよがりな短い恋。


チェックアウトを済ませ、ホテルを後にする。

京都でまた忘れられない思い出が増えたと考えながら帰路に就いた。
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