旅先恋愛~一夜の秘め事~
8.「結婚しよう」
翌朝、起きると少しだけ頭痛は治まっていた。

昨夜はお風呂に入った後、色々な事柄を考えていた。

その間何度も暁さんからの着信があった。

けれど今、声を聞く勇気はなかった。

きっと泣いてしまうし、平静ではいられない。


【体調不良だと聞いた】


【大丈夫か?】


【ひと言でいい。声を聞かせてくれ】


忙しいはずなのに、幾つも送られてくるメッセージに胸が詰まる。

今回の出張はかなりハードなスケジュールだと聞いていた。

彼の優しさが嬉しくて、つらい。


あなたが本当に気にかけている人は私じゃないでしょう? 


恋心を忘れるために、会社とのしがらみのない私を選んだの? 


私は、想い人に気持ちがバレないようにするためのカモフラージュ?


痛みすぎた心は限界を迎え、悲鳴を上げる。

告白しようとしていた自分の愚かさに呆れる。

すでに想う人がいるのだから、応えてもらえるはずがないのに。

頬を伝う涙がフローリングの床に丸いシミを作る。


【少し貧血なだけで平気です。心配してくださってありがとうございます】


儀礼的な文章を返すだけで精一杯だった。

送信した後、すぐに電源を落としベッドに入ったが涙が止まらず、眠気はなかなか訪れそうになかった。
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