訳あり子育て中は 御曹司からの猛攻にご注意下さい
「あの頃淳之介さんに比べると、登生くんはとって素直でいい子ですね」
「え?」

この時、森先生は登生を淳之介さんも子供と認識しているのだと気づいた。
中野家のホームドクターってことは、淳之介さんの実家にも行き来があるはず。
変な誤解を生まないうちに、登生は淳之介さんの子供ではないと否定しておいた方がいいのかもしれない。そう思っているのに、

「子供の頃の淳之介さんはやんちゃでとってもいたずらっ子したからね、そこはあまり似ない方がいいのかもしれません」
ハハハと、楽しそうに笑う森先生。

「あの、あの子は・・・」
淳之介さんの子ではありませんと言おうとしたのに、
「わかっています。小さい頃の淳之介さんを知る人間が見れば一目でわかりますよ」

え?

「目も鼻も口も髪も、すべてが小さな頃の淳之介さんそのものです」
「・・・・」

私だって、うすうす気づいていた。
麗華に見せられた写真から察してもいた。
それでも信じたくなくて、耳を塞いでいた。
それなのに・・・


「・・・子・・・璃子・・・しっかり」
耳元から聞こえる淳之介さんの焦った声。

口の中に広がる鉄の味。

そのうち強引に口を開けられて、ガーゼのようなものを噛ませられた。
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