訳あり子育て中は 御曹司からの猛攻にご注意下さい
お金持ちや地位のある家に生まれた子は『帝王学』なるものを学ぶんだと聞いたことがある。
それは人の上に立つための学問。
きっと、淳之介さんもそんな環境の中で育った人なのだろう。
ただ口がうまいだけではなく、たとえ嘘でも本当に聞こえさせてしまうような説得力とある種の威圧感。
数日前に知り合ったばかりの男性のマンションに住むなんてありえない行動を当然のことのように言う淳之介さんに私は説得され、最終的には「じゃあアパートが決まるまで」と頷いてしまった。

私たちの同居の中で決めたルールは3つだけ。
嘘をつかないこと。
登生の前では喧嘩をしないこと。
今まで家事代行サービスに依頼していた家事を私がすること。これは私が希望して条件に入れてもらった。

「登生の世話だけでも大変なのに、家事までできるの?」
心配そうに淳之介さんが言う。

「大丈夫です。世間のお母さんたちはみんなやっていることです」
「ふーん」

いくら気にしなくてもいいと言われても、こんな素敵なマンションにタダで泊めてもらうには抵抗がある。
せめて家事くらいして住み込みの家政婦のつもりにでもならないと、やっていられない。

「じゃあそう言うことで、僕は登生とお風呂に入ってくるよ」
「え、ああ、すみません」
早速登生の世話をさせてしまった。
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