冷酷王の元へ妹の代わりにやってきたけど、「一思いに殺してください」と告げたら幸せになった

「私がどういう形で此処にいたいか?」

 オルテンスはメスタトワ王国の王城で、居場所を徐々に確立していっていた。
 一生懸命、デュドナのためにと動いているオルテンスを見て益々オルテンスに対する好感度も上昇している。本人としてみればこの国の為にと動いているだけなので他意は一切ない。




「オルテンス様、最近生き生きしていますね」
「なんか、お仕事任されるの楽しいなぁって。私、国だと役立たずって言われて、こういう仕事任されたことなかったから。それに仕事をちゃんとすると、陛下たちもお礼を言ってくれるし、凄くやりがいがあるの」
「オルテンス様が楽しそうで私も嬉しい限りです」



 ミオラはオルテンスの言葉を聞いて、「やっぱりサーフェーズ王国は許すまじ」と思っているようだが、その内心を隠してにこにこしている。


 オルテンスは誰かからお礼を言われたり、よくやったと褒められることが嬉しくて仕方がなかった。
 祖国では人との関わり合いもなかったオルテンスなので、正直誰かの役に立てることがこんなに嬉しいこととは思っていなかった。だけどいざ、こうして動いてみるとこうやってやりがいを感じるからこそ……皆笑顔なんだなと思った。王都を散策していた時、皆楽しそうにしていた。オルテンスのように痛みに耐えている暮らしをしている人ばかりではなく、笑っていた理由が何だか分かった気がした。



「オルテンス様は可愛いだけじゃなくて、とっても優秀ですよね」
「そんなこと、はじめて言われた」
「それはオルテンス様の世界が狭かったからですよ。そしてオルテンス様に自分の力を使う機会が与えられなかったからです。オルテンス様は、この国にずっといるんですよね? そうなったらオルテンス様は自由なんです。この国の国民としてやりたいことをやりたいように出来るんです」
「自由に……難しい。一先ず、陛下たちのために動きたいって思う」


 ミオラの言葉に、オルテンスは難しい顔をして言う。そんなオルテンスにミオラは告げる。



「要はオルテンス様がどういった形でこの国に居たいかなのですよ」
「私がどういう形で此処にいたいか?」
「そうです。オルテンス様が我が国のために動きたいと言う気持ちはオルテンス様を見ていれば分かります。それでもどういう形でこの国に貢献したいかは人それぞれです」
「ミオラは?」
「私ですか?」



 オルテンスはミオラの話を聞いて、ミオラはどういう気持ちでこの国に貢献したいと思っているのか気になったらしい。
 あとはオルテンスは今まで虐げられ、そういうことを考える余裕もなかったので突然言われて戸惑っている面もあるだろうが。



「私は、そうですねぇ……。陛下のことを君主として尊敬しています。そしてこの王城で侍女が出来ることも誇りに思っています。なので、陛下が暮らしやすいようにするっていうのが目標ですね。まぁ、今の私はオルテンス様専属の侍女みたいな感じですから、オルテンス様が健やかに楽しく過ごせるようにして、この国に貢献したいと思ってます」
「私が健やかに過ごすのが貢献になるの?」
「そうですとも。オルテンス様が楽しそうに生きているってだけでも私も含めて癒されて仕事への意欲がわいてます。あとオルテンス様は優秀なので、将来への投資もありますね。王侯貴族というのは結構打算で動いているものですよ。オルテンス様に優しくしてかえってくるものに期待する感じですねー。私は是非とも将来的に可愛いオルテンス様の子供でも抱かせてもらえればなって思ってます」



 ミオラはそんなことをいいながらにこにこと笑っている。



 オルテンスにはどうして自分が子供を産んでそれを抱かせてあげれば、もらったものが帳消しになるのだろうと不思議そうだ。打算なんて言葉を口にしているけれども、ミオラのやっていることはある意味無償の施しのようなものに見えた。




「まぁ、難しく考える必要は何一つないんですよ。オルテンス様が何をしたいか、どうありたいかですよ!」
「私が、どうありたいか……。考えてみる」
「ええ、そうしましょう。それでオルテンス様が望む未来をつかみ取りましょう」
「うん」



 未来なんて考えた事もなかった。


 自分の手でそんなものを決めていいと思っていなかった。
 だけど、今のオルテンスはそれを決めていいのだ。自分の手で、何をしたいか。
 それを実感してオルテンスはミオラの言葉に力強く頷くのであった。


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