冷酷王の元へ妹の代わりにやってきたけど、「一思いに殺してください」と告げたら幸せになった

「お日様の下は、楽しいです」

「……寝てたのか」
「はい。とても気持ちよくて、日向ぼっこって気持ち良いですね」
「……そうか」


 日向ぼっこって気持ち良いとそんな風に言って、にっこりと笑う。
 その無邪気すぎる笑みを見ると、デュドナは何だか拍子抜けした気持ちになる。警戒心を持たなければならないと分かっているのに、それでもその笑みは何だか人をほっとさせるような、警戒心を失わせるようなものだったから。



「陛下は、お仕事の休憩ですか?」
「まぁ、そうだな」
「陛下も一緒に日向ぼっこしませんか?」


 オルテンスがそう問いかけてしまったのは、まだ寝ぼけているからと言えるだろう。完全に起きている状態だと、こんなに簡単に誘えなかっただろう。ぽかぽかした気持ちで、陽気な気分なので、オルテンスは思わず問いかけてしまったのである。
 口にした後、少しはっとしてしまう。陛下を日向ぼっこになんて誘ってしまった! とどうしようかなといった表情に変わる。ただミオラたちはニヤニヤしながら見ている。


 デュドナは、その言葉に一瞬驚いて、だけどあまりにも無邪気にオルテンスが笑ったからか、思わずうなずいてしまった。勢いのまま頷いてしまったわけだが、ぱぁああとオルテンスの表情が一気に明るくなったのを見て、今更無理だと言いづらくなった。
 ついでにミオラたちも、どうぞどうぞとオルテンスの隣にデュドナを誘導する。



「……」
「……」



 オルテンスは勢いでデュドナを誘ってしまっただけだし、デュドナも無邪気さに思わずうなずいてしまっただけなので……、二人とも一気に無言になる。


「えっと、陛下、私の日向ぼっこに付き合ってくれてありがとうございます」
「ああ」
「陛下は日向ぼっことかよくします?」
「いや」
「私は日向ぼっこ初めてしたんですけど、凄く気持ちよいですね」


 オルテンスは、にこにこと笑いながらそんなことを言う。


 初めて日向ぼっこをしたなんていって、幸せそうに笑う様子はやっぱり王族らしくはない。王侯貴族というのは、そういうことをすることはない。嬉しそうに日向ぼっこなんてものをするオルテンスのことをデュドナは不思議な気持ちになってしまう。


「……お前は、凄く楽しそうだよな」
「はい。だって、お日様の下は、楽しいです」


 まるで今までお日様の下を歩いていなかったようなそういう言い草に、なんとも言えない気持ちになるデュドナ。


「……そうか。好きな時にこうやって外に出たらいい」
「陛下も、一緒に付き合ってくれますか?」
「……」
「駄目ですか?」
「……たまになら」


 オルテンスの言葉には打算はない。彼女はただ素直に、デュドナと日向でのんびりするのも楽しそうだと思っているだけである。
 日向ぼっこにデュドナも付き合ってくれたので、また付き合ってもらえるのではないかと思って問いかけた言葉。それにたまにならと答えてくれて、何だか嬉しい気持ちになっている。



「陛下って……冷酷王って呼ばれてますけれど、そんなに恐ろしくないですね」
「……そんなことはないだろう。そもそもお前は俺のことをそこまで知らないだろう」
「そうですけど……でも怖くないです」


 オルテンスにとっては、自分のことを傷つけるものもおらず、悪口も言う人たちもおらず、穏やかな暮らしを与えてくれるデュドナのことを優しいと思っている。冷酷王と呼ばれるだけの逸話がきっとあるだろうことは分かっている。きっとオルテンスの知らない恐ろしい面もデュドナにはあるだろう。それでも少しでも接してみて、その性質を優しいと思ってしまう。
 オルテンスは、祖国でずっと大変な目に遭ってきていた。心休まる空間など全くなかった。誰かに傷つけられることが当たり前で、誰かに優しい言葉を駆けられることもなかった。
 だからこそ、オルテンスにとってこの場はまるで天国のようなのだ。



「俺はもう行くが、お前はまだ日向ぼっこをするか?」
「はい。もう少しのんびりします」
「……あんまり風邪をひかない程度にな」
「はい」


 風邪をひかない程度にと、そんな風に言われることが嬉しくてオルテンスは花が咲くような笑みを浮かべるのだった。
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