愛たい夜に抱きしめて
本当のビギニング

꙳☄︎




「兄がすみませんでした……。ほんとうに……」

「わたしこそ、お力になれず申し訳ない……」



同級生兼お隣さんのふたりが、頭を深々と下げている様は、ハタから見ればどんな風に映るのか。



「澄良、ほらこれだよこれ」



そして、当事者である氷昏はというと、自分のことなのに一切我関せずで、昼休みの話に出てきた共同本棚を指差している。




「わ、わかったから……。いまは紫昏くんの話を聞こうよ……。さすがの紫昏くんでもキレる……」

「乃坂さんはお気になさらず。氷昏兄さんのこういうところにはもう慣れてますから……」




ふたりして諦めたような顔になってしまう諸悪の根源である氷昏はきょとりと目を丸くしていて。

目は眠たそうじゃないからか、本来のぱっちり二重を取り戻している。



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