忘れたまんまの君がポケットに入れていたのは青い日の恋かもしれないと先生は云った

ナガレside

夕方から集まる同窓会前に、
家族とショッピングモールに
買い出し。
全然
時間に余裕があるとわいえ。

「後から、追加とかないだろ。」

おれは呟いて
腕の時計を確かめると、
同窓会までの時間を
一応計算する。
全然
買い出しは終わっていたはずが
天然水を買い忘れたと
云われて、
帰るつもりの車から、
自分だけトンボ返りで
モールに戻った。

「ここが出来て、3年か。」

ふと、でも意味なく。

モールのメインストリートに
アニバーサリーセールと
バーナーが流れて、
デジタルカレンダーが
ディスプレイされた
液晶パネルを見て、
思った。

思い出の場所に建った
新スポットは、
自分も含め住人達が
週末にくり出す
マストショッピングエリアに
なっている。

「ダチに捕まる前に、出るか。」

1階の食料品売り場から
両手に水を持って、
駐車場に向かう。
国道添いに面したモールだから、
正面エントランスから
外に出る方が、
駐車場には近い。

週末、
気軽に出かけられる場所は、
十中八九誰かに会う程の田舎街。

地元で就職して住む輩は
自然と結束も強く、
学年関係なく声を掛け合う。

おれは、いつもと同じ様に
1階の専門店ストリート通りを
足早やに抜けて、
エントランスの吹き抜け広場を
目指していたが、

「やっぱ、服、何か見るか、、」

メンズアンテナショップの
店先に見えた、
1枚のシャツを見つけて
足を止めてしまった。

ハンガーを手にして、
傍らにあった鏡に向き合う。

「買っとくかな。」

自分に充てたシャツの感じから
直ぐに店内奥にハンガーごと
持っていけば、

『ヒィア☆ヴィーゴー!時間だze
~!HA!!オハオハロハ~☆』

店の外から、
やたらデカい声が聞こえた。

あれは、!と反射的に思うと、
レジを打つ店員同士が

『あれ、誰だっけ?確か、、』
『えー、知らない。有名人?』

話ている声も届いて、

「ヴィゴってインフルエンサー
じゃないですかね。」

馴染みの店員に、つい
助け船を出してみる。

「ですよねー。ヴィゴって、
出身、この辺ですよね。」

店員はショップ袋に入れた
シャツを渡しながら
話をつなげてくる。

「学校一緒でしたよ。」

おれは袋を受け取り、
財布を直して受け答え。

「あ、そうなんですね。こっから
録ってるの、見えるかなあ。」

『そんな有名なんすか。ちょっと
見て来て、いいっすか?』

おれ達のやり取りで、
ヴィゴを知らない店員が
興味を持ったのか、
電話を片手に出ようとするのを

『ハンガー直してこい。』

頭を小突かれて止められてた。

ちょっと笑えて
「じゃ、もらっていきます。」

片手で紙袋を揺らすと、

『『有り難うございました。』』

背中から2人の声が
小気味良く送り出してくれた。
からか、

「♪~♪♪~、、」

駅の曲を鼻歌に鳴らして、
今度こそ広場を通り過ぎ様と
して、
集まりつつある人だかりの
中に、
派手めな金髪の同学年を
見つけてしまった。

『ヴィゴじゃね。ヴィゴだあ!』

上の方から降ってくる、
女子学生の声に、
改めて相手は有名人なのだと
思って
足を止めそうになる。

渦の真ん中に見える顔は、
たまに同窓に云われて
ネット動画を話ネタにする為
見る
知っている程度の同窓生。

いや、違う。
ある意味良く知る、

『肥後』だ。


チラ見すれば、
何人か、同じクラスになった
女子の顔が
相手を取り巻いている。
おれ達と同じく、
地元組のヤツで、旦那は祭の
世話役で見かける。

『ヴィゴ~!里帰りしたぁ?』
『動画みてるよー。』

そうしているうちに
ヴィゴの周りには男女の
囲みが出来てるけど、
通り過ぎる。

「どうせ、同窓会で会うし。」

1度手にする水と、
紙袋を持ち直して玄関を出よう
とした時、

『ヴィゴ、お前もしかして、
今日の同ー窓ー会、回す気かあ
俺らとかネタにするんだろ!』

『イエース!!あったりぃい☆
顔出しNGは言えよ!モブ達よ』

『なんだそりゃ!ひでーな、
誰がモブだよ!おりゃ~!』

集まる野郎達と、
答える相手の言葉に
何故か自分が反応したのが
解った。

立ち止まり、
ゆっくり後ろを振り替えると、

ヴィゴの金髪頭をグシャグシャと
かき回して、
ヤツが持つ
自撮り棒の電話にポーズを
とる野郎達が見えて、

そいつらに向かって
金髪を軽快に振りながら
満悦顔のヤツが
集まる奴らに演説している。

『ヒィア☆ヴィーゴー!写真は
並んでくれyo~!YA!!~☆』

その言葉は、
あの時の調子と

全く同じで、

おれの目の前に、
中学2年の全校集会の光景が
蜻蛉の様に

突然
立ち込めてきた。

「走馬灯ってやつか。」

おれは呟いて、
自分の真っ黒な前髪を
指で摘まむ。

「あの時は、何も思っても
なかったのにな。」

今も昔も 黒い髪。
仕事も車を売っているから、
そんなにカラーリングに
うるさい職場でもないのに。

そういえば

高校の時は
ライトブラウンに染めた。
それ以来、
黒のままだ。

中学2年の夏休みに入る
全校集会は蟬がうるさくて、

色んな意味で暑かった。

ミーーーン
ミーーーン

『お前はお前に!釣り合うヤツ、
見つけて去れyo~!イエーイ~!』

ミーーーン
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