どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~



「あ……そうだ!今週金曜、コンパあるんだけど小久保も来る?」


姉御肌の吉岡先輩は、大体の後輩を苗字の呼び捨てで呼ぶ。

それが、親しみを込められているようで心地よく感じていた。

今は、上司もみんな『小久保さん』とか呼ぶ時代だし。


「佐竹も来る?」

「はぁ?俺、吉岡さんと小久保さんのコンパ行っても意味ないでしょ?」


前のデスクから顔を突き出すようにして、拒否する佐竹さん。


「あんたバカじゃないの?あんたは、女として参加すんの!あはは。男好きな男ってのも多いからねぇ」


今日は朝から、そういうネタが好きだなと思っていると、吉岡先輩はピンクのブランド物のバッグから本を取り出して私に見せた。


「これ、BLの漫画!最近ハマってんのよ。経理のゆっぴーから借りたの」


表紙には、イケメン男子2人が、汗をかきながら体を寄せ合っている絵が描かれている。

高校時代、友達と読んだことがあるけど、まさか吉岡先輩が。


「それ、電車で読んでるんですか」

「そう!もう、朝から興奮しちゃうのよ」


その本を借りたというゆっぴーさんは、オタクキャラで有名な大人しい先輩なんだけど、社内でいじめ問題があったときに、立ち上がったのがこの吉岡先輩だった。

曲がったことが大嫌いで、情に厚い、吉岡先輩は私の憧れであり、目標。




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