どっぷり愛して~イケメン社長と秘密の残業~
Love18 本当の私 ~吉岡先輩SIDE~
Love.18 本当の私

~吉岡先輩SIDE~


私にとって、「普通」はもう存在しないと思っている。

普通に結婚し、
普通に子供を産むという未来はない、とあきらめた。

20代で子宮を全摘する手術をしなければいけないなんて、そりゃ誰も想像していないよ。


でも、それから私は変わった。
変われたと思う。


病気になるまで、私は決していいひとじゃなかった。

妻子ある人と付き合ったこともある。
誰かを傷つけたこともある。

人を外見や肩書で区別したり差別したり、そんな部分も持っていた。

病気に感謝なんてないけど、唯一感謝するとすれば、人の本質を見抜く力をくれたことかもしれない。


病気になったとき、大好きだった先輩から『あんた、遊び過ぎたからそんなことになったんじゃないの?』と心ないことを言われ、ロッカーで号泣した。

それを見て、そっと肩を抱いてくれたのは、お局さん的な存在でみんなから嫌われていた30代の先輩だった。
いつも厳しかったその先輩のことは私も苦手だったし、よくみんなで文句を言っていた。
そのことも知っていたはずなのに、彼女は私の気持ちをとてもよくわかってくれた。

話、聞くことしかできないけど、と飲みに誘ってくれて、そこで病気の話をすると、私のために泣いてくれた。

自分のことのように泣いてくれた。
全然仲も良くない生意気な後輩のために。

そして、自分の母も子宮の病気になったことがある、と話してくれた。

病気はなった人にしかわからないこともあるから、いろんな人がいろんなことを言うけど気にしないようにと最後にはアドバイスまでくれた。


そのあとから彼女は、手術を控えていて不安な気持ちだった私を何度も誘っては話を聞いてくれて、上司への報告や同僚への説明も、噂が広がらないように配慮してくれた。

そのおかげで、私がそんな大きな病気になったということはあまり知られていない。



私は、この時思った。

人は見かけじゃない。

噂を信じちゃいけない。

誰もが長所と短所があると。


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