記憶の花火〜俺が暴いてやるよ、欲望にまみれた秘密を〜
最終夜 記憶の花火
けたたましいパトカーのサイレンと共に、現場に到着した千夏は、まだ僅かに煙が上がる現場を眺めながら、黄色の規制線を跨ぐ。

既に他の刑事達も到着し、鑑識チームの持田が、めぼしい証拠品を片っ端から、写真を撮っている。

「ちょっと、足長いからって、ちゃんと(くぐ)ってくださいよ」

相川が、千夏の後ろから、規制線を(くぐ)りながら睨んだ。

「足長いから跨ぐんでしょ」

千夏は、跡形もなくなった、古林洋介が住んでいたとされる木造二階建ての家屋の燃え(かす)を眺めながら、しゃがみ込んだ。

「何ですか?急にしゃがみ込んで」

長い髪をキチンと纏め、スラックス姿の相川が千夏を真似るようにして、隣にしゃがむ。

「いや、凶器残ってないかなって」

「鑑識の初見、火の不始末ってさっき無線きてませんでしたっけ?事件じゃないでしょう?」

千夏は、クククッと笑った。

「まあね……でも知ってた?古林って、未解決の殺人事件の容疑者の仲間だったかもしれなくてさ」

「え?そうなんですか?」

「そ。だからさ、凶器隠してなかったか気になってね」

千夏は、立ち上がると、瓦礫を足で避けながら、まだ燃えきっていない物の欠片がないか、目を凝らしていく。
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