記憶の花火〜俺が暴いてやるよ、欲望にまみれた秘密を〜

何処からかまた、中庭のクスノキに、蝉が飛んできて、まるで助けを求める叫び声の様に、命を震わせている。

「コワイね、死んでもなお、燃え尽きることのない人間の愛憎ってヤツは」

男は、ショーケースに並んだ色とりどりの花火を眺めながら、簡素な丸椅子に腰掛けると、2本目の煙草に火をつけた。

そして、深呼吸するように、たんまりと肺にニコチンを送る。


大きく吐き出した真っ白な煙は、燃え尽きた花火のように、緩やかに宙へと、吸い込まれていった。

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