記憶の花火〜俺が暴いてやるよ、欲望にまみれた秘密を〜
奏多と健斗は、同じ大学の同じイベントサークルに所属していた。

たまたま進学した大学が、学部柄、男子が多かったため、奏多は、外部の女子大生との出会いを求めて、春は花見、夏はバーベキューとイベントを開催しているイベントサークルに在籍して、好みの女を見つけては、奏多は、ひっきりなしに取り替えていた。

ただ奏多には、ないものがある。金だ。父親は、しがないタクシー運転手、母親は、弁当屋でパートをしていて、奏多の家は、経済的には苦しかった。

奨学金で、大学に進学しているため、親の仕送りだけじゃ到底足りず、週に3回居酒屋でアルバイトしていた。

「可憐な感じだなぁ、まだ男知らないって顔してる」

健斗が、いやらしい目つきでスマホの由奈を眺める。

「まあな、桃の花女学院のお嬢様で一回生。初めてが俺だったしな」

「まじかよ、マジで羨ましい」 

健斗は、日に焼けたガタイのいい体を屈めると、悪魔のような顔で俺に囁いた。

「なぁ、一回ヤラせてよ」 

「は?何でお前にヤラせなきゃ、いけねー訳?」

「お前さ、奨学金だったよな?10万でどう?」

健斗は、実家が不動産会社を経営する、いわゆるボンボンだ。顔は不細工でもないが、鼻が大きく目がつりあがっていて、整った顔とはとても言い難い。

奏多が健斗とつるんでるのは、よく飯を奢ってくれたり、人数集めの合コンの費用を出してくれるからだ。

「10万でそんなヤバい橋渡るかよ。適当な女に10万はらって、ヤラせてもらえばいいだろ?」

「飽きたんだよ、そーゆーの。金もらって腰振る女はさ、結局汚く見えんだよ、誰にでも腰振るわけでさー」

お前の顔で、よく言うよと心の中で毒づきながら、奏多は、健斗のゴツい腕を、自分の肩から、どかせて、前を歩いていく。

こんなやつに構ってられない。いまから由奈とデートなのだ。

適当にファミレスでメシを食べて、一人暮らしの1Kに連れ込んで、セックスする。

童顔だが、胸も大きく、感度も高い。何より、男というものが初めてだから、なんでも言うことを聞く。奏多が教え込んでいくたび、女になっていくことに堪らなく、快感を覚えていた。

「なぁ、50は?」

ーーーー思わず健斗を振り返った。

50万……半年分の学費だ。コツコツ、バイトしなくても半年間は、親の少ない仕送りで生活できる。

健斗が、奏多の耳元で囁いてくる。

「その子に酒飲ませてさ、眠ったところで、俺と交代してよ、朝起きたらお前が、隣に寝てんだからさ、バレやしないって」

「……そんなこと、それって犯罪だろ?」

眉を顰めた奏多に、お構いなしで健斗はニヤついている。

「お嬢様なんだろ?仮にバレても、そんなこと言えないって。それに、バレない方法、取るからさ、安心しろよ。あとは俺とお前が、墓場まで持ってけばいいんだよ。お前は、金が手に入る、俺はウブなお嬢様とお前の代わりに一回ぽっきり楽しむ、それだけじゃん」

健斗は、分厚い財布から、50万を取り出して、奏多の前で振ってみせた。

「どうする?」 

奏多は、初めて目にする福沢諭吉の束を、じっと見つめていた。

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