隣のブルーバード
 姉弟同然。
 いや、本当の姉弟よりもっと近い存在だった。

 こうしてふたりで並んで、無言で歩いていても、まったく気を使わなくてすむ。

 裕生が相手だと。

「じゃあね。今日はありがとう。付き合ってくれて」
 わたしが玄関口で手を振ると、ああ、と言った裕生が続けてぽつりと言った。

「でもさ、これだけ長い間、沙希の良さに気づかなかったんなら、大した奴じゃねえよ、そいつ」
「うん……そうだね」

 その言葉。
 なんだかスーッと心にしみ込んできた。

 あれっ、もしかして、慰めてくれたのかな。
 ほんの少し気分が和らいだ気がする。

 まあ、今日は裕生がいてくれて助かった。

 スグ先輩が杏子さんと付き合いはじめたとき、充分すぎるほどショックは受けていたから、正直、今日はそれほど落ち込んでいたわけじゃない。

 それでも、長年の片思いを葬りさるのに、話を聞いてくれる人がいるといないとではまったく違う。

 おかげで明日のバイトにも、いつもどおり行けそうだ。
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