隣のブルーバード

第4章 沙希24歳、冬ふたたび

 失恋したとはいえ、その後ももちろん、バイトは続けていた。
 先輩は店に住んでいるわけではないので、毎日顔を合わせるわけでもなかったし。


 そのころには働きはじめて1年以上経っていたので、ひととおりはこなせるようになっていたし、何よりこの仕事が好きだった。

 最近では、将来、自分の店が持ちたいと、かなり真剣に考えはじめていた。
 それほど、花屋の仕事に魅力を感じていた。

 アレンジを工夫して花束を作り、それをお渡しするとき、どのお客さんもとてもいい表情をされる。

 喜ばしい贈物のときはもちろんだけれど、病気の人を案じる顔や亡くなった人を偲ぶ顔もしみじみとして美しい。
 表情に、願いや祈りの気持ちが現れているからだろう。

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