恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
14、彼の約束
「まあ、キレイですねえ。牡丹と菊の柄が映えて」
志乃さんが私の着物姿を見て頬を緩める。
今私たちがいるのは絢斗のマンションの寝室。
着付けをしてくれたのは彼女で、この真紅の美しい振り袖は、社長……絢斗のお父さまが私にプレゼントしてくれたもの。
 絢斗は着物を見て微笑んでいた。
『もううちに嫁に来た気分でいるんだろう。それに、いい父親でいたいんだと思う。俺が子供の時はよそに女がいたから』
 私がいることで、絢斗と彼のお父さまの仲が修復できたらいいと思う。
 私には父がいないから……。
 今日は元日。
 近所の神社に初詣した後は、絢斗の実家に歩も連れて挨拶に行くことになっている。
 仕事納めの日に峯岸さんが会社にやってきて一波乱あったけれど、今は落ち着いている。
 あの事件の後、峯岸さんのご両親が絢斗の実家に『娘が迷惑をかけた』と謝罪しに来たらしいのだが、絢斗のお父さまは『謝罪する相手が違う』と言って追い返したらしい。
 
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