恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 美鈴はこんなに華奢な身体をしているのに、たったひとりで歩くんを育てている。
 今日もその細い身体で歩くんを守ろうとしていた。
 昔から彼女は頑張り屋さんだった。
 朝一番に学校にきて、教室に置いてある鉢植えに水をやると勉強を始める。
 家が貧しかった彼女。高校からの外部入学で特待生だった彼女が学校にいるためには学年で五番以内に入らなければいけなかった。
 プレッシャーもあっただろうし、大変だったと思う。
 そんな彼女に嫌がらせをする生徒がいてとても不愉快だった。
財布を彼女に盗まれたって嘘を言った女子学生もいたっけ。
 理事長に進言してそんな生徒は退学させた。
 うちの親が学校に多額の寄付をしていたから、理事長も俺の言葉を軽視できなかったのだろう。
 許せなかったんだ。美鈴はいつだって必死に頑張っているのに……。
「そんな頑張らなくていい」
 俺に頼れよ、美鈴。
 彼女の頬をそっと撫でると、リビングに戻った。歩くんは行儀よくソファに座ってテレビを見ている。
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