【改稿版】明日はキミのために泣きたくない。


「……俺は、理子に何も伝えられなかった。これからもずっと一緒にいられるって信じてたから……ちゃんと好きだって伝えられたらって今でも思うんだ。」
 それに今だったらもっと上手くできたかな、とか……考えてしまう。そしたら理子を失うことはなかったかもしれないんだから。
「だから、朝陽や千紘ちゃんにはちゃんと伝えた方がいいよ。ちゃんと目を見て気持ちを伝えられるんだから。」
「山内さんと理子さんは違います」
「……?」
 俺は彼女のいう言葉に驚きを隠せなかった。
「私たちは普通の、カップルじゃなかったんです。私はずっと、責任と義務感という鎖で朝陽を縛ってた」
 責任と義務感……?
「……山内さんは、数年前のスーパー爆発事故知ってますよね?」
「ああ、俺も救助活動に行ったからね。だけど、その時って千紘ちゃんは小学生くらいじゃない?」
 スーパーの爆発事故……俺も記憶に残っている。理子が死んで数年経った頃にあった爆発事故だから。
理子の様な犠牲者は出したくない、と現場に向かった記憶がある。
 そういえば助けた子……ちょうど千紘ちゃんと同世代だよね。元気かな。
 でも、今までの話となんの関係があるんだ?
「……私は、その現場にいた被害者なんです」
えっ、被害者? 千紘ちゃんが?
どういうこと……? もしかして、中にいたの?
「私はこの事故で、命は助かりましたが消えない傷を負いました。それを朝陽は自分のせいだと責任を感じて私のために全てを犠牲にしていて……私のことは好きじゃなかったと思います」
「それ、朝陽に言ったことあるの?」
 朝陽が、責任だけで付き合ってるわけないって知っている。だって、彼女と別れてからの朝陽は本当に抜け殻状態だったんだから。
「いえ……」
「言わなきゃ、伝わらないよ。自分の気持ちを隠しても、相手には何も伝わらない。顔を見て、想いを伝えられるって素敵なことだよ。俺はもうそれは叶わないから」
 俺が思うに、千紘ちゃんは今も朝陽が好きなんじゃないかなって思ってしまう。まあ、後は本人たち次第だ。
「じゃあ、千紘ちゃん。俺帰るね」
「えっ、晩ご飯は?」
「家で、奥さんが待ってるから」
 千紘ちゃんは「え?」と驚いていたが俺はそれには反応せずに朝陽の家からでた。
[今から帰るよ]
 そう、俺の奥さんに送って……理子に久しぶりに話しかけた。
「……伝えたい気持ちは伝えなきゃ伝わらないよ、か。理子の言葉だな」
 俺も彼女に……今日も、伝えよう。
“君が好きだよ”って。



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