ただいま配信中!~年上幼馴染は人気Vtober~
「む、無理だよ! 全国に流れるんでしょ」

 あわあわと手を振ったのに、やはり出雲くんはしれっとしている。

「当たり前じゃん」

 そんな顔で言われては困ってしまう。

「いいだろ、お前の顔も弾いてる様子も、声も名前も……まぁピアノの音以外なにも出ないから」

「うう、そう言われてもぉ……」

 私は途方に暮れた。

 それでは断る理由がない。

 私の得意なことでお願いしてもらえるのは嬉しいし。

 でも本当にネット配信にふさわしいものが弾けるんだろうか?

「な、頼むよ。お前のピアノ、好きだしさ」

 けれどある単語に、またどきんとした。

 好き……?

 だけどすぐにハッとする。

 好きって、私のピアノがだ。

 別に私が好きと言われたわけじゃない。

 なのにどきっとしてしまったのが、むしょうに恥ずかしい。

 でも大切で、大好きで、今や家族の出雲くんにお願いされているのだ。

 しかも私にとってデメリットはなにもない。

 よって……私は出雲くんのお願い通り、配信用BGMを弾くことになってしまったのだった。
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