ただいま配信中!~年上幼馴染は人気Vtober~
 ぼそっと言われたこと。

 私は数秒、考えなければいけなかった。

 妬ける……妬ける……というのは……。

 やきもちというやつ!?

 思い当たった途端、どきっと心臓がひとつ跳ねた。

 今度はほんのりどころではなかった。

 顔まで熱がのぼってきたように感じたくらいだ。

「え、え、どうしてそういうことに!?」

 あわあわしながら、なんとか言った。

 どうして私がやきもちなど妬かれているのだろうか。

 まったく意味がわからない。

 私のその質問や反応は、出雲くんにとって不満だったようだ。眉がしかめられた。

 そしてこちらへ一歩、踏み出される。

 私は余計にどきっとしてしまった。

 でも後ずさったりすることはできない。ピアノの前に座っているのだから。

 その私の前まで来て、出雲くんはそっと身を屈めた。

 出雲くんのほうが背が高いうえに、私は座っているのだから、上から覗き込まれる形になった。

 私は胸をばくばくさせながら、その視線を受け止めるしかない。

「俺だけのものでいてくれたらいいのに、って思って」

 私をまっすぐに見て出雲くんは言った。

 小さな声だった。

 まるで私だけに聴かせたいと思っているような声だった。

 それに視線がまっすぐすぎて、固すぎて、私は目がそらせなかった。

 なんと言ったものかもわからない。

 俺だけのものって、それって、まさか……。

 口を開きかけた。

 でも間違っていたらかなり恥ずかしい。

 いや、恥ずかしいどころではない。

 思い上がっていることになってしまう。

 まさか出雲くんが私を……なんて。
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