私を見て、私を愛して
 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

土曜日。

その日は朝から雨が降っていた。

雨の音は聞こえないのに、傘をささないと濡れてしまうような日だった。

ゆか子はメッセージを送って約束をした相手に会っていた。

残業をしている洋樹を待っていた日、夜だったのにすぐに返信してくれた人だ。

「いらっしゃい。どうぞ、入って。」

ゆか子がにこやかに家へ迎え入れたのは、高校時代からの友人の京香だ。

京香はいまだ独身だが、ずっと変わらず美しい。彼氏とは長く付き合っているため、結婚も近いのかもしれない。

「ありがとう。お邪魔しまーす。はい、これおみやげ。」

「ありがとう。あれ?これって駅に新しくできた洋菓子屋さんのクッキー?」

「そうよ。気になってたでしょ。」

クッキーを受け取るために京香に近づくと、ふわっと香水の香りがした。

華やかな香りにドキッとした。

これが愛される女の香りなのかと、少し複雑な気持ちになった。

「こっちが呼び出したから、おもてなししようと思って、買っちゃった。」


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