私を見て、私を愛して
お昼時ということもあって、ほとんどの席が埋まっている。

洋樹はテーブルの上に置かれた水を一口飲んでメニューを手に取った。

「はい、メニュー。前に来たときはサバの味噌煮定食を食べたけどおいしかったよ。」

洋樹がメニューを渡してくれた。

ふたりで見られるように置いたメニューに一通り目を通す。

しばらくメニューを見ていると、洋樹の体が遠ざかった。

おそらく注文を決めたのだろう。

ゆか子はもう一度メニューに目を通す。

アジフライ定食のページには、赤く大きな文字で『一番人気』と書かれている。

ゆか子は顔をあげた。

「アジフライ定食にしようかな。」

「じゃあ俺は生姜焼きで。」

店主のおじさんに注文してから水を一口飲んだ。

窓の外を見ながら、ぼーっと考えていると、視線を感じて洋樹の方を向く。

顔を見られていたことが、なんとなく気まずく感じて、ごまかすように口を開いた。

「このお店はいつ来たの?」

洋樹は思い出したように言う。
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