フルール


「俺、彼女と別れたばっかりなんだよね。」


帰りの車で彼が言った。

そういうことか。

そりゃ彼女がいたに決まっている。

こんなにかっこよくて優しい男の人を女の子が放っておくはずがない。


前の彼女、どんな人だったのだろうか。

きっととびきり美人でモデルみたいな女の人。

もしかしたら愛嬌があって可愛らしい女の子だったかもしれない。

どちらにしても彼の隣が似合うような人。



なぜか胸が痛くなった。

この人は今日初めて会った人。

私、嫉妬してる...?



そんな自分に驚きを隠せないまま、私は答える。

「そうなの?」


どうして別れたのか。

彼女のどこが好きだったのか。

聞きたいことはたくさんあったけれど、どれも聞くのが怖かった。


理由は一つしかない。

気付きたくなかった。

気付かないふりをしてた。

でも、もう認めるしかなかった。


私、彼のことが好きなんだ。


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