へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜




 深い海の中に浮かぶ泡沫を覗けば、大切な家族が、ここでの思い出が映し出されていた。

 全てがミアにとっての宝物で、失いたくない大切なもの。

 その泡沫を優しく抱き締めれば、弾けて細かくなった泡が彼の姿へと変わっていく。



「団長……」



 普段なら彼が持つ冷酷さで人を寄せ付けないが、ミアはそんな彼が優しく笑う所も、仲間想いなことも知っている。

 伸ばされた手を掴めば、そのまま離さないとでも言うかのように抱き締められる。

 感じられるこの幸せな気持ちと、彼を取られたくないという嫉妬が入り交じり、強く抱き締めた。弾けた泡の一つがミアの中に入り込み、正解を見出してない気持ちに答えを導いた。



「私、団長のことが好き……」



 憧れがいつしか恋心へと変わり、リヒトの言葉が優しさが温もりが、ミアを後戻り出来ない場所まで足を運ばせていた。

 知ってしまえば、その気持ちに嘘はつけない。








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