へっぽこ召喚士は、もふもふ達に好かれやすい 〜失敗したら、冷酷騎士団長様を召喚しちゃいました〜
人前でフェンリルと話せることがバレたら、それはそれで問題になる。
ミアは、周囲を気にしながらもフェンリルに小声で反応する。
「相性って……?」
『そのままの意味だ。人間達が持ち合わせる魔力とこいつらの魔力が合っていない』
「そうなの?」
普段とどことなく様子が違うフェンリルの顔を覗くと、真っ直ぐに怯えた魔獣達を厳しく、だが決して見放すことはしない、彼の見守るような瞳が輝いていた。
ミアに覗かれていることにようやく気がついたフェンリルは、不貞腐れたような表情を向けて、わざとらしくため息を着く。
『いいか。グリフォンは風を操ることができる力がある。その風で空を飛び、空中からの攻撃を得意とする。さっきあいつを任された騎士は、グリフォンの特性を拒絶する何かがあって、グリフォンが反応したんだ』
「あんなに威嚇したのは、そのせいだったのね……」
『騎士達の相性を見極める必要があるが、その前にこいつらの気力が持たないだろうな』
ミアに癒しを求める魔獣達は、休憩している騎士達に背を向け、彼らを見ようともしない。
フェンリルの言う通り、このまま訓練を続行し続けるには、早めに相性が合う相棒を見つけ出さないと、完全に魔獣達は騎士達に、最悪人間に敵意を向けてしまう。
心配そうな顔で仲間を見つめるフェンリルに、思わず笑みを零したミアは勢い任せにフェンリルを撫でた。
「ちゃんと、フェンリルは皆のことをちゃんと知って、見てくれているんだね」
『……別に』
「昨日だって、ケルベロスのこと詳しく教えてくれたじゃない」
『いいから、あんたは騎士達の相性を見極めることに専念しろ!』
何故か大きな声を上げて、自分の檻の中に戻っていくフェンリルの背中をミアは黙って見つめる。召喚士に捨てられて、傷ついた心を持ちながらも、仲間と共にここで戦って来た彼は、どうにかして現状を変えたいと思っているのだろう。
会話ができるようになった理由も、詳しいことは教えてくれないが、きっと会話できるようになったのも、フェンリルの想いがあってこそだ。
言い方は少々荒々しい所もあるが、根は優しい子なんだと、ミアは嬉しくなった。
「よし!私も頑張ってみる!大丈夫、絶対にいい相棒を見つけてあげるからね!」
励ますように一匹ずつ抱き締めてやると、魔獣達も意気込んで、背を向けていた騎士達の様子を伺い始めた。