貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
先月は半分創ちゃんがしてくれた作業を今回は一人で進める。昨日やり方は教えてもらっていた。請求書を印刷しながら、合間に新しく届いた発注書を入力していく。最近はマニュアルを見る頻度もめっきり減った。

仕事に打ち込んでる方が気が紛れるや……

そんなことを考えていると、いつのまにかもう昼だ。長引いているのか、創ちゃんは帰ってなかった。

「与織子ちゃん。先にお昼行ってきて? 私残ってるから」
「清田さんこそ先に行ってください」

私の答えに「いいのいいの。ゆっくりしてきて?」と清田さんは優しく微笑んだ。

「じゃあ……お言葉に甘えます」

そう言うと、私はお弁当の入ったバッグを持って席を立った。

見晴らしのいい休憩スペースは、元々お昼に利用する人は少ないから今日も誰もいない。
私は無意識に大きく息を吐き出してテーブルに腰掛けた。

正直、全く食欲は湧かない。いつもより少なめに詰めてきたお弁当は広げただけで、目の前に変わらないまま放置されていた。

家に持って帰って食べよう……

一口も口をつけないまま、お弁当をしまおうと手を持ち上げると、休憩室の扉がガチャリと音を立てて開いた。誰か自動販売機に用事かな?と顔を上げると、それは今一番会いたくなかった人の姿だった。
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