青い星を君に捧げる【弐】
ハジメ様の手に手を重ねて歩いてくる綾乃様をこの場にいる誰もが羨望の眼差しを向けている。


『やっぱり綾乃さんは美しくて、教養もあって一様とぴったりだわ』


『それに比べてあの子を見てよ。一様が迎えた元踊り子ですって。噂通り見た目しか取り柄がない女なら……一様の株は下がるわね』


私の評価が下がることに関しては一向に構わなかった。だけど、ハジメ様が悪く言われるのは聞き捨てならない。


そんな思いを胸に秘めて、私はただ遠くからハジメ様を見ていた。誕生会は滞りなく、進んでいく。


『____どうしましょう!!ピアニストの方が交通渋滞に巻き込まれて来れそうにないって連絡が』


すっかり壁の花へと成り上がっていた時に裏からそのような話が聞こえた。


『当主様きっての希望で幼い頃からピアニストを招待してたのに一体どうしたら……』


「あのっ!」


ハジメ様が楽しみにしていることと聞いていても立っても居られなかった。彼の特別な日を何としても壊したくない。


𓂃◌𓈒𓐍

暗くなった会場に唯一の光源となるスポットライトがグランドピアノの鍵盤1本1本を照らす。


注目を浴びるグランドピアノへと私は歩みを進める。ヒールの音が静かな会場に響いて、それと共に私の姿を見た観客がどよめいた。
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