島津くんしっかりしてください
「……女の子がそんな険しい顔しちゃだめだよー? スマイルスマーイル」



「え?」






声をかけられて、バッと俯いた顔を前に向ける。






そこにはいかにもチャラそうな男が軽い笑みを浮かべて立っていて、バチっと目が合う。






日に照らされて金色にも見える、明るい茶髪からちらりと覗く耳にはピアスが光っていて。




目じりが下がった垂れ目は薄く細められている。






目があった瞬間、なんだか嫌な汗が流れた。






あ、れ……なんで、それ……。






一瞬心臓がどくんと強く脈打つ。






でも、なんとか立て直し、見知らぬ人物だと判断して、愛想笑いを装備した。







「えっと……どなたですか?」



「あれ? 陽平から聞いてない感じ?」



「……え? 島津くん?」






不意に知り合いの名前が出て、反応する。







しばらく考えて、それからピンときた。






「……あ、もしかして協力してくれる人って……」



「そーそ。それ俺のことー。鹿島一輝っていいまーす。鹿に島でかしま、一に輝くでいっき。よろしくね~」






2かっと愛想の良い笑顔。






手を差し伸べられて、迷うことなく笑顔を継続させた。






それに隠したのは勿論拒否の意味。






そのことに気が付いたのか、彼はヒュウッと茶化すように口笛を吹いた。






「誠ちゃん硬派だねー。ま、そんな女の子も俺嫌いじゃないなぁ?」





「はぁ……そうですか。ところで、島津くんとの関係はどういう……?」



「そこからか~」







軽口をさらりと聞き流し尋ねると、彼は苦笑するように目を細めた。






「ただの幼馴染だけど~?」



「幼馴染……」






なるほど、それで島津くんと親しげな雰囲気なんだ。






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