島津くんしっかりしてください
「それは違うよ。俺、二人と知り合ったのは最近だから、偉そうなこと言えないけど……でも、琴音ちゃんといる真見さんはちゃんと幸せそうだったし、笑顔だった。それは確信を持って言える」




「ようへ―お兄ちゃん……」






涙をこらえるようにぐっと口を閉ざす琴音ちゃん。






その頭を何度か撫でて、上着を羽織った。






「待っててね。真見さんを連れて帰ってくるから。一人でお留守番できる?」



「……っうん。いってらっしゃい、ようへ―お兄ちゃん」






ぐいっと手で目元をぬぐい、こくんと頷くのを確認して、家を飛び出した。









……飛び出したのは、いいものの。



俺は真見さんの事を全くと言っていいほど、知らない。






くそ……っ完全に役立たずだ。











……あっ。



その時ある女子の姿が脳裏をちらついて。









『じゃあ私はもう行くね! 島津くん、誠の事に関しては結構詳しいと思うし、なんでも聞いてね!』











坂田さん……だっけ。



あの人なら、真見さんの居場所がわかるかもしれない。






藁にもすがるような思いで、スマホに指を滑らせる。






『こんばんは。島津です。
真見さんが朝出かけると言ってから現在まで帰ってきてません。真見さんの居場所に心当たりはありませんか?』





そんな文章を送った瞬間既読が付いて、ブーブーっとスマホが振動した。






え……電話?



困惑しながらも、慌てて出る。






『もしもし⁉ 坂田加奈子です! ねぇ、どういうこと⁉』



「あ、もし、もし……島津、です……?」






電話なんて慣れてなくて、たどたどしくなってしまうけど、そんなことはどうだっていい。





口早に状況を説明し、再度協力を申し込む。






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